広島大学

市川貴之拠点長の挨拶About Us

市川拠点長研究拠点長
市川貴之

 2020年より始まった新型コロナウィルスによるパンデミックのさなか,金融業界を中心にESG(環境・社会・ガバナンス)を優先的に考える投資プロセスが重要視されています。環境という観点から,将来の二酸化炭素の排出動向が企業に対する投資判断に組み込まれ,必然的に脱炭素に向かう世の中が現時点では既定路線となっています。2020年10月には内閣総理大臣より,「2050年での温室効果ガス排出ゼロ」が表明され,再生可能エネルギーの主力電源化の道筋は避けて通れない状況となっています。しかし,再生可能エネルギーの特徴として変動を伴うこと,すなわち,再エネ電源が調整力を持っていない問題があり,短周期の変動対策には蓄電池,長周期の変動(季節間変動)対策および再エネの大陸間輸送には「水素」がエネルギー貯蔵・輸送の媒体として期待されています。しかし,水素は我々の生活する環境下ではガス状であり,輸送・貯蔵には不向きであるとも考えられています。
 本拠点はこうした背景の中で,前拠点長である小島教授のリーダーシップのもと,水素キャリアおよびエネルギーキャリアとしてとらえられるアンモニアに着目し,水素製造用分離膜,アンモニア貯蔵材料,アンモニアの安全性に関する研究を行いながら窒素循環科学を創出するとともに,若手研究者の育成と国際的な研究教育を目指して2016年に設立されました。2021年3月の小島教授退職に伴って拠点長を引き継ぎましたが,引継ぎのタイミングに合わせて新たなメンバーも迎え,「アンモニア製造」,「アンモニア利用」,「アンモニア貯蔵」,「アンモニア燃焼」,「アンモニアからの水素発生」,「アンモニア利用時の安全性評価」等含め,広く窒素循環科学をますます発展してまいりたいと考えております。現在世界において最も多量に製造される化学品としてとらえられているアンモニアは,素材としての価値とエネルギーとしての価値がほぼ等しい物質です。今後,エネルギーとしての利用に重心が移ることが予見される中で,本学の技術が大きな変革を伴う社会に実装されていくことを目指して研究開発を進めてまいりたいと思います。ご支援の方,よろしくお願いいたします。

PAGE TOP